深夜テンションっておそろしいね……読み返して稚拙さにびっくりした……いや直りきってないけどもorz
まだくーさんにいろんなものを見せきれず、くーさんもユフィの事情完全に呑みこめてないくらいの時期想定で。
くーさんは、ユフィにとって数少ない「涙を見せられる人」だといいな。弱みを見せても受け止めてくれる人は、もうユフィの傍にいないから。
周りの人が有能すぎたので、ユフィはそれと比べた自分の非力さに、諦めてる部分があります。一般常識からみたらかなり強いのに。だからこそのから元気というか、余計なところのないまっすぐさ、みたいなところもあるのかな……太陽説。
それでたまに折れそうになる。虐めていいから支えてくれカルテットメンバー!(←
ちなみにラインは、ユフィが自分のことを「守らなければならない存在」だと認識してるのを知ってるから、自分がユフィの弱い部分に触れてはいけないと、こういうところでは必要以上に距離を取ってます。
ラインも無意識に(自分を偽る意味でも)弱いところは絶対に見せない。ユフィはそれを知ってるからむやみに手が伸ばせない。
シリアス展開にもってくとこの二人本当に鬱だ……。
カルテットからは離れますが、頭いい組(鳥さんと歪さんとライン)で会話させ隊。すっごい暗くなりそうだけどね!(←
***
いつもの廊下で、そこではあまり見かけない銀髪に遭遇した。
「ライン様じゃない!」
真っ先に鳥がかけた声に、ラインは即座に反応し、こちらを見て微笑した。
「……あぁ……鳥さん。サチコさんと狂さんも」
やわらかな微笑、それを見て狂は思う。
これは偽物だ、と。
顔を合わせたことがあるのは数度だが、それでも違和感を覚えた。
いつもの彼のそれではない。覇気が欠けている。
「お揃いで。ユフィさんに用ですか」
「用ってわけじゃねぇがな」
「遊びに来たんだよ。ついでにお菓子をいただきに!」
「そうですか……それなら我が城へ」
「え、どうしたのライン様、ライン様が誘うなんて珍しい」
そこでラインは、ちらと背後へ―――この城の主の部屋の方へ目をやってから、微笑を苦笑に切り替えた。
「今は少し……ユフィさんを、そっとしておいてほしいんです」
鳥とサチコが顔を見合わせる。それを視界の端に、狂はそのままラインを見つめ、聞いた。
「なんかあったのかい」
すると彼は、今度はその笑みを曖昧なものにする。
よくもまぁ、と狂は内心で複雑な思いを抱いた。よくこんなにも、ころころと違う種類の笑みを使い分けられるなぁ。まるで仮面を取り替えているようだ。
「いや……近年にしては大量の、人死がありまして」
王に反抗する賊の反乱。村が一つ、潰された。
ある程度予期していたことなのに、完全に防げなかった。守れたはずの命が、たくさん失われた。
「……私の読みも甘かったんですが……まぁ、アステリアのことですから……」
視線とともに自然と下がっていたラインの頭を、鳥が軽くはたいた。
「痛……っ」
「ライン様ー、鳥さんおなかすいちゃったんだけれども」
「あぁ……じゃあ行きますか。サチコさんもお茶くらいいかがです」
「なら少しご馳走になるぜぇ」
そしてそのままこちらへ向いた、今日は少しばかり光の薄い青を、狂はあえて受け流した。
口を開きかける青年に向かって歩きつつ、宣言。
「……しばらくユフィを借りるぜ」
「え……? あぁ……どうぞ」
一瞬眉根が寄ったのは、普段の呼び方と違ったからだろう。橙の自慢に聞く通り、これは聡い男である。
だから狂は、擦れ違いざまにその耳元へ、低い声を届かせた。
「……アンタも適度に吹っ切るがいいさ、センティレイド候」
「―――ッ!?」
見開かれた青に、図星か、と喉の奥で笑う。
この調子では―――橙の方も、大変なことになっていそうだ。
慧眼に心中をかき乱されつつも、ラインはその後ろ姿を目で追って、期待や希望に近い願望を抱いた。
―――ユフィさんを、お願いします。
自分には、自分では、彼の苦悩と痛みの捌け口になってやることはできないから。
ノックも何もなく扉が開いたかと思えば、入ってきたのはラインではなく。
「……くーさん」
「よぉユッフィ。元気ねぇなぁ」
いつものように、颯爽と。独特の空気をもつのに軽やかなのは何故だろうかと、働かない頭でユフィは思う。
思い、ベッドに腰掛けたまま、強いていつものような笑顔を浮かべようと試みた。
「元気ないんだよなぁ。くーさんの元気分けてくれよ」
「お嬢さんから事情は聞いたぜ」
彼がお嬢さんと呼ぶのは、おそらくラインのことだろう。一度そうからかっている現場を目撃したことがある。本人はどこ吹く風だったから問題ないのだろうが、一応「ライン男だからな?」とフォローしておく。
いつもならそこで茶化す言葉の一つや二つ、返ってくるのだ。
返ってくるのに。
「―――逸らすな」
金属を思わせるような固く冷たい声音に、心臓が跳ねた。
今日は、雰囲気が―――違わないか?
「村が一つ、潰れたんだって?」
「―――……、」
ずき、と胸の奥が疼く。
脳裏に蘇る、己が招いた地獄絵図。
悲鳴、断末魔、炎の赤と血の赤と―――肉の、焼ける、匂いが。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
届かなかった。
ああ―――記憶に、“声”に、潰される。
そんなユフィを、狂は、
―――嗤う。
「お前、何様だ」
「―――ッ!!」
その一言に、かぁ、と体中の血が逆流した。ベッドから立ち上がり、真っ向から狂を睨む。
「何様だ? 国王様だ!」
目がしらが熱い。視界がぼやける。
奴の嘲笑が―――滲む。
そうだ、俺は国王だ。国王だから―――、
「そりゃあご立派なことで」
「……っ、お前、に! 俺の! 何がわかる!!」
刹那。
彼の目の色が―――変わった。
「―――おいユフィアシード」
突然首を掴まれたと思ったら、手加減なしにベッドへと叩きつけられた。
それなりに肺へと衝撃があって、一瞬呼吸が詰まる。
まっすぐ見上げた先には―――蒼と紅のオッドアイ。
普段とは比べようもない苛烈なそれに―――そして一切の表情が消えたそれに。
恐怖、した。
「『お前』に、何が救える?」
「……く……、ぁ、はッ」
ぎ、とスプリングが鳴る。喉に、胸に、少しずつ体重が掛けられて―――気づけば呼吸が、できない。
「計り違えるんじゃねぇよ、お前には何一つ成せはしない」
「ひ……ぁ、―――、」
怖い。こわい。
やめてくれ、言うな、その先を、言うな―――!
「たった一つですら……守れない」
「……っ! ―――……ッ、」
呼吸が、言葉が、封じられる。
蒼紅の対比から、逃れたいのに、逃れられない。
わかってる。わかってる。だから突きつけないでくれ。
俺は、俺はこんなにも無力で非力で―――
何一つ、守れない。護れない。救えない。
守れたためしなど、一度も―――
「―――馬鹿。泣くなよユッフィ」
声の調子が、変わった。
氷のような冷たさが失せて―――子供へ噛んで含めるような。
ふ、とのしかかっていた力が消えた。けれどそれ以上の呪縛が四肢に絡みついていて、ユフィは動けない。
再度伸ばされた手にユフィは反射的に体を固くして目を閉じた。降ってきたのは―――
優しい指と、くく、といういつものような笑い声。
おそるおそる目を開ければ、―――普段通りの、どこか困ったようにもみえる、微苦笑。
「ちょいと脅かしただけじゃねぇか」
「……くー、さ……」
先程まで首を絞めていた指が、今は穏やかに髪を梳いてくる。
それに戸惑いつつ、けれどその優しさが痛いくらいに切なくて、ユフィは夕陽を閉ざして逃げた。
「―――……一人で背負うな、ユフィアシード」
耳元で囁かれるような、それでいて脳裏を犯す声。
「でなきゃ……全部その手からこぼれるぞ」
「……わかっ……て、る……」
「わかってねぇ」
なんとか絞り出した言葉は一蹴された。
わかってないのはお前の方だ、と胸の内だけで反論する。今まで俺が、どれだけ―――どれだけのものを、この手からこぼしてきたと思ってる―――
「一人じゃあ、無理だ。誰かに助けを求めたらどうだい」
あの白銀の王とか、と続ける狂に、ユフィはただ緩慢に首を振った。あの子には、あの子にだけは頼ってはならないのだ。
―――そして。
できるならお前に頼らせてくれと―――その一言は、どうしても言えなくて。