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+ユメイロファンタジア+
「 【カルテット】いつのまにか方向が迷子 」
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きょーがお茶の続編書いてくれて、それで続き書かなきゃフラグがたったので。(←
いつの間にか作者の手を離れたユフィがちょっと病んでるよ!?(どうした
くーさんが「フィ」と呼んでくれることが架の中で妙にツボな今日この頃。

過去ログはこちら(企画ページ直結)、きょーのはここから


* * *

 灼熱の髪色を視界から消したドアの音が、妙に響いた沈黙。
 唯一残った狂はカップを手にしたまま、何故か一度悠然と立ち上がり、わざわざユフィの目の前に座りなおした。
「で、あんたはどうしたんだい?」

「……、何が?」
 訳がわからなくてユフィが首を傾げれば、狂の眉間に寄ったしわが深くなった。
「何が、じゃねぇってぇの。さっき笑ってた理由は何かと聞いてんのさ」
 ようやく思い至って、あぁ、とユフィは軽く笑う。
「子持ちなの俺とくーさんだけだろ。だから振ってみた」
「振ってみたってぇな……」
 狂が反応に困るのも理解できるので、ユフィは悪かったよと苦笑した。
「鳥にさ、俺がお前の父親代わりになってやろうか、って言ったんだ」
 ネタばらしをした途端に、狂の顔に渋さが広がった。
「……なんでそうなった……?」
「いやまぁ流れなんだけれども。」
「……オレはたまに……アンタは馬鹿なんじゃないかと錯覚するぜ」
 あ、やっぱり馬鹿なこと言ってるように聞こえるのか。
 途中経過を説明したらまた反応も違うのかもしれないが、面倒になったのでやめた。
 だから違う問いをぶつける。
「くーさんにとって、息子とは何だ?」
 その問答の発端のような口調が誰かに似ていると感じて、すぐに晴れ空より澄んだ青を思い出した。ユフィには到底及べない思考能力から生み出される考察を、時折こうやってふっかけてきた男。
 狂が黙っているので、更に追加する。
「家族とは、何だ?」
 蒼紅の双眸に宿る色が変わった。けれど彼は押し黙ったままだ。
 この男にとって「家族」という単語が、一言では語れない意味を持つことを、ユフィはなんとなく理解していた。我ながら意地悪な問いだったかと内心苦笑するが、反省はしない。
「じゃあ俺の独り言聞いてくれよ」
「……なんだユッフィ、今日はいつになく饒舌だな」
 本当にどうしたんだろうなぁ、と相槌を打って、ユフィは狂が淹れてくれた紅茶を一口啜った。美味である。
「俺はこう見えて人見知りでさ、だから」
「ちょっと待て。誰が人見知りだってぇ?」
「いやだから俺が。」
「寝ぼけてんのかい?」
「残念ながらまったく」
 ツッコミはいいからとりあえず聞けよ、とユフィは続ける。
「俺は人が信用できなくてさ」
「―――オレだの鳥サンだのサチコだのと付き合ってる口が、よくそんなこと言えるなぁ」
 その一言はユフィにとって至上の評価で、だからにこりと笑って見せた。
「はは、騙されたなくーさん。俺の道化もなかなかのものだろ?」
 狂の表情が凍りついた。
 いつもこの男の飄々とした態度には頭を抱えているのだ、たまには言い負かしてみるのも悪くはない。
 あぁでも、とユフィはそこで語弊に気づいて訂正を加えることにした。
「だからさ……なんていうかなぁ。たとえば他国に使者を出すとしても『俺の言葉が本当にそのまま伝わるか』『向こうの返事は本当にこれなのか』と心配になるんだ、俺は。『こいつはアステリアのことを至上と考えて動ける人間か?』ともね。うちの使者が信じられないんだ、疑心暗鬼にも程があるだろ?」
 アンタは、と狂が口を挟む。
「……アンタは、社交的で誰にでも分け隔てなく接していて……なんでも受け止める懐の広さをもっているヤツだと」
「思ってた? なら作戦成功だ」
「じゃあアンタは誰も信用してねぇってのかい、フィ。あの白銀の王も?」
 狂の声に滲む真摯さが、まるでいつもとは逆転した立場を思わせて可笑しくなった。
 だからユフィはあえて、からからと笑って見せる。
「そこで自分を挙げないのがなんともくーさんらしいな」
「ユフィアシード、真面目に答えろ」
 狂の勢いにさすがに気圧されて―――ユフィは笑みを消した。
「信用してるよ」
 蒼紅のオッドアイを、まっすぐに見つめる。
「ついでに言えば、くーさんもサチコも鳥も、信用してる」
 狂の双眸に宿る力が、緩まない。こんな話するんじゃなかったかな、と一瞬だけ後悔した。
「最初はもちろん信用してなかったさ。そこでようやく大回りした話が戻るわけだが、俺にとって信用に値する人間は、“家族”でくくるんだ」
「……、あぁ?」
「セレナとティアスは無論だけど、ラインと……マコちゃんのこともくーさん知ってるよな。あともう何人かと、鳥とサチコとお前だよ。どうだ狭いだろう」
 狂の表情が複雑なものになる。
「で、我ながら厄介だと思うところがここからで、俺は“家族”が救えるなら手段を選ばない人間だってこと」
 たとえば百人の民を犠牲にすれば、あるいは自分の命を差し出せば、“家族”が救えるというのなら。俺は犠牲を躊躇せずに“家族”を救う。
 そこでユフィは、自分の中の違和感に気づいた。
「……うん? 違うな……信用に足るから“家族”なんじゃない。……放っておけないから、俺の力で幸せにしてやりたいから、“家族”なんだ」
 そこで己の中で積み上げていた理論が破綻した気がした。
 わけわかんなくなってきたなぁ、とユフィは思考を言葉に変換していく作業を放棄する。
「悪いくーさん、偉そうなこと言って俺の中でもまとまってなかった。やっぱり考えるのは苦手だ。今の忘れてくれ」
 両手を挙げてソファに体重を預ける。
 だいぶ歪んだ考え方であることは自分でも気づいている。だから先程は思わず―――笑ってしまったのだ。
 ユフィがゆっくり紅茶を飲み干すだけの時間、狂はずっとユフィを見ていた。
 そしてぽつりと一言。
「―――フィ。アンタやっぱり、俺と似てるぜ」
「そりゃ光栄だ」
「だから『鳥よ息子になれ』発言になるわけかい。なるほど」
「主旨は合ってるがその言い方なんか嫌だな」
「そんなユッフィがどうして民が死んだくらいであんなにへこんでたんだい?」
 痛いところをつかれた。いつぞやの失態を思い出して、ユフィは思わず苦笑を浮かべる。
「あれは忘れてほしいんだが……まぁ、国王であるってことの強迫観念かな。俺はくーさんが思ってるほど強い人間じゃないし、なんだかんだ言ってるが、俺の両肩には数えきれないほどの人間の命がのってるんだ」
「なんでオレに話した?」
 まっすぐに向けられた蒼と紅。まっすぐに見返して、ユフィは微笑む。

「―――“家族”だからだよ」

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