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「 七夕ですね 」
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 ポニーテールの日だっていう情報も仕入れたんですけどそっちまで手が回らなかった。
 七夕SSです。ライマコ。


 天の川のほとりに、天帝の娘で織姫と呼ばれるそれは美しい天女が住んでいました。
 織姫は、天を支配している父天帝の言いつけをよく守り、毎日機織りに精を出していました。織姫の織る布はそれはみごとな錦でした。
 天帝は娘の働きぶりに感心していましたが、年頃の娘なのに恋をする暇もない織姫を不憫にも思っていました。
 そこで、天の川の西に住んでいる夏彦という牛飼いの青年と結婚させることにしました。夏彦は誠実で働き者と評判の青年で、娘の結婚相手には申し分なかったのです。
 しかし、結婚してからの織女と夏彦は、毎日遊んでばかりいるようになってしまいました。
 機織りが動くことはなく、牛たちもほったらかしでした。
 天帝も始めは、新婚だからと大目にみていましたが、いつまでもそんな有様が続くと黙っているわけにはいきません。
 何度たしなめても仕事をしない二人に、天帝はすっかり腹を立ててしまいました。
 そして天帝は、織姫と夏彦を、天の川の両岸に引き裂いてしまったのです。
 織姫と夏彦は、恋人に会いたいと涙にくれ、仕事も手に付きませんでした。
 さすがに二人を不憫に思った天帝は、一つの条件を出しました。
「一生懸命仕事をしなさい。そうすれば一年に一度、7月7日の夜に会うことを許してやろう」
 心を入れ替えた織姫と夏彦は、天帝の言いつけどおりに一生懸命仕事をするようになりました。
 そして、一年に一度の逢瀬の日には、かささぎが天の川を渡る橋となり、二人は楽しい時を過ごすのです。

+++

「めでたしめでたし」
 ぱたん、と真子斗は本を閉じた。
「……めでたいんですか?」
「めでたくないんですか?」
 真子斗の読み聞かせを本を眺めながら聞いていたラインが首を傾げたので、同じように真子斗も傾けてみる。
「だって、愛する人と一年に一度しか会えないんですよね。そんなの、寂しすぎやしませんか」
「そ……それは」
 確かに。
 でも、と真子斗は食い下がる。
「これは“怠けすぎたらいけませんよ”って教訓の話でもあって……だから、これはこれでいいの」
 織姫と夏彦……彦星は、それで満足しているのだから。
 眉根を寄せて不満げな顔をしていたラインは、まぁ気持ちはわかります、と急に苦笑した。
「私も夏彦状態ですしね……」
「……、どういう意味?」
「あぁ、いや……」
 曖昧に言葉を濁したラインの声にかぶせるように、ノック音が響いた。びく、と必要以上にラインが反応する。
 顔をのぞかせたのはトレバーだった。
「あ、陛下こんなところに……! 早く戻ってください!」
 トレバーの表情に余裕がない。それが伝播したように、ラインの表情もひきつる。
「え、もしや、そんなに―――」
 ライン様、と。
 廊下の向こうから聞こえた声の主が、バンッと壊れんばかりの勢いで扉を全開にした。
「見つけましたよライン様ッ! 政務サボってなにやってるんですか!!」
 現れたレヴィナはまさに鬼の形相である。その怒号に名指しされたラインだけでなく、真子斗も反射的に身を竦めてしまった。
「さっ……サボってない、やることはやってあるじゃ―――」
「全部終わってから遊んでください! それにもうすぐ謁見の時間です!!」
「別に忘れてないぞ! まだ時間が―――」
「支度を! なさいと! 言ってるんです!!」
 なおも反論をしようとしたラインは、口を開いて、しかし言葉ではなく溜息を吐きだして、しぶしぶと立ちあがった。
「わかりましたわかりました申し訳ございませんでした……王佐殿の言う通りにします……」
 いまだガミガミとまくしたてるレヴィナと連れだって、ラインは部屋を出ていった。去り際に困った顔を添えて、真子斗へ手を振って。
 廊下を進むレヴィナの声が聞こえなくなって、ようやくトレバーがふぅ、と息をつく。
「……ラインさんサボってたの?」
 真子斗の問いに、トレバーは軽く首を否の方向へ振った。
「レヴィナが大げさなだけだよ。ちゃんとやることは済ませてあったから」
 そこでトレバーは、まぁ、と苦笑を滲ませた
「以前の陛下に比べたら、最近は仕事量が減ったというか……自主休憩時間が長い気もするけど」
「……、え?」
 私も夏彦状態ですしね。
 ラインの言葉が蘇る。
 それって、つまり。
「……あたしのせい……?」
 真子斗の呟きに意味ありげな笑みを残して、ご丁寧に「陛下をよろしく」なんて言葉を残して、トレバーも行ってしまった。

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