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+ユメイロファンタジア+
「 お月見 」
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 某方から素敵ネタをいただいたので勢いで書きました。
 いつもネタ提供ありがとうございます……!作者以上にうちの子把握しててほんと脱帽です。


――――――

「うーさぎうさぎー、何見てはねるー」
 月見団子の載った皿を手に、真子斗は階段をのぼる。
「十五夜おーつきさんをー見てはーねーるー」
 ドアを開け放していた自室の奥から、何て歌です、と声がした。
 真子斗はその問いに戸口に立ったまま立ち尽くし、しばし考えて、「うさぎ……?」と曖昧な返事をした。
 窓辺で空を見上げていたはずのラインは、半身だけこちらへ振り向けて、苦笑する。
「疑問形ですか」
「じゅ、十五夜……? たぶんうさぎで合ってると思うんだけどな……」
 子供の頃に口ずさむことで覚えた歌、タイトルなど意識したことはない。
「それにしても今夜は月が明るいですね。目が眩みそうです」
 視線を空へ戻したラインの言葉に、傍へ寄りながら今日は一年で一番月がきれいな日なんだよと返す。
「あ、そういえば。なんか昔ね、『月がきれいですね』を『愛してます』の意味で使った人がいるんだって」
「……へぇ」
 授業で聞いた気がするのだが、誰だっただろうか。“I love you.”の訳だった気もするのだがよく覚えていない。
 自分で話を振っておいてうまく説明できないのがもどかしく、あぁちゃんと授業聞いとくんだったなぁ、と今更後悔する。
「それ、美味しそうですね」
 ラインの声に我に返って、窓際に寄せてあったテーブルの上に皿を置いた。既に花瓶にススキが活けてある。
 今夜は空が一番よく見える真子斗の部屋で、ささやかな月見なのだ。
「お月見団子だよ。マコちゃん特製です」
 真子斗には馴染みの深い季節のイベントは、ラインにとっては新鮮なものであり、こういう機会を設けるととても喜んでくれる。
 ちなみに先程済ませた夕飯は月見そばだった。
 砂糖醤油の餡をからめた団子をほぼ同時に口へ放る。我ながらいい味にできた。
「ん、私これ好きです。美味しい」
「ほんと? お口に合ってなにより」
 味の好みが似ているので、おいしさを共有できるときは素直に嬉しい。
「そうだマコトさん。あれ、どうしたら兎に見えるんですか」
 と、二個目の団子を口に入れながらラインが月を指す。えぇとね、と真子斗も一緒に見上げた。
 いつにもまして明るい月が、面白いくらいに世界を照らしている。
「あれはこう……こういう向きでうさぎさんがいてね……餅つきをしてるんだよ」
「餅……?」
「そう、えーと、お餅は杵と臼っていう道具でつくんだけど、それがこういう形をしていて」
 小さい頃親戚の家で餅つきをしたのを思い出しながら、真子斗は何とか説明をする。だが、あの時見た杵というか今一般的に使われている杵は、鍬とか斧とかそういった農具と同じ原理で使うような形であって、月の兎が使っているものとは違う気がする。イラストで見るのはL字でなく直線だ。
 至極真面目な顔でそれを聞いていたラインは、ふぅん、と唸りながらもう一度月を見た。
「……あぁ、確かに……そう見えますね。納得です」
 しかし、とラインの横顔に微笑が浮かぶ。
「あの陰を兎に見て、月には兎が住んでいるだとか、餅をついているだとか……よく考えますねぇ」
「ほんとにね」
「そして、それにちなんで年に一度、美しい時を狙って月を愛でる時間を作る。そういう感性、私は好きだな」
 風流を解し愛でる、ラインの感性が彼らしくて真子斗は好きだ。釣られて思わず口許が緩む。
「それにしても、」
 するりとラインが真子斗の方へ視線を滑らせた。右手で横髪を耳にかけ、そのまま頬杖をつく。銀髪が白い光を流してさらりと揺れた。
「あなたと眺めるからでしょうか、今夜は月が綺麗ですね?」
「ね、あたしもラインさんと一緒にお月見できてしあわ―――」
 ―――……、あれ?
 言いかけて、先程自分が示した先人の言葉を思い出して、息が詰まる。
 くすくすと愉快げに笑われたことにそのまま自分の考えが間違っていないことを確認して、かあ、と顔が火照った。
 うまい言葉が見つからず、あ、う、と呻きながら、思わず視線を外す。
 結局「しあわせ、です」とだけしぼり出したら、手が伸びてきてくしゃりと頭をなでられた。
「ふふ、私もです」
「……うう……ラインさんのキザ、もう、バカ……」
「おやおや、ごめんなさい? 本当に可愛い人だなあなたは」

――――――

 口の中じゃりじゃりする終わっとけ\^^/
 ちなみに冒頭の歌は「うさぎ」が正解です。
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