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「 【カルテット】たまにはシリアスに 」
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 ……と思ったら半分だけだった(←
 カルテット親御さん会談でいつか出たネタを起こしてみました。
 bot会話でいろいろとキャラが掴めてきましたが、まだ完璧ではないので、違和感があったらご指摘お願いします……。

※前記事で拍手のお返事しました。



* * *

 月明かりさえ枝葉に遮られ届かない、暗い森の中。
 狂は逃亡の只中だった。
 己の呼吸が耳障りだと思うほどに乱れている。両の足は叱咤して無理矢理動かしているが、筋肉と肺が悲鳴を上げているので、本当ならば欲望のままに止めてしまいたい。
 けれど、止まるわけにはいかなかった。
 それはすなわち―――『帰れない』ことを意味するのだから。
 先程から左の脇腹を気休めに押さえてはいるものの、抉られた肉が残していった痛みも、熱さも、既に感じられない。挙句右手の先さえ冷たくなってきて、力が入っているかさえ怪しい。
 己の逃走経路を示すことにもなるその赤を追って、背後から気配が迫ってくる。
 ここまで来れば“家族”を守る、せめてもの時間稼ぎになっただろうか―――
 一瞬よぎった妥協点に、休息を求めていた足から、ふと力が抜けた。
「っ……―――!」
 倒れるわけには行かなくて、なんとか踏みとどまり手近な幹を支えにする。
 気配はもうすぐそこまで迫っている。
 どうにかしてこの危機的状況を打破しなければ―――
 途切れそうな意識の中で、ただ“家族”を守らなくてはと一心に思う中で、狂は―――ある男を思い出した。
 本来ならば狂とは無縁であるはずの―――けれど悪戯に繋がりを深めてしまった、かの男。
 狂が今おかれているこの状況と、接点は何もない。何もないけれど。
 「助けて」と言えば、否、言わずとも、間違いなく手を伸ばしてくれる―――

「―――……、フィ……」

 呟いた途端―――視界に光が満ちた。
 目が眩むほどの、この陽光の色には覚えがある。
 自分がどこにいるのか気づいて、あぁ、と思ったと同時に、女の金切り声が耳を突いた。
「ユフィ様、ユフィ様っ! クルイ様が―――!!」
 おそらく女中のあげたその悲鳴に、けれどその光景を色違いの双眸に映す力も残っておらず、ただただ眩しい陽光を反射する床を眺めていることしかできない。
 理解したことは、もう追っ手が迫ることはないということと、じきにあの橙色の王がやってきてくれること。
 己の中でその結論が出ると力が抜けて、がくりと膝をついた。
 そのまま、前のめりに倒れこむ―――
 ―――のを、誰かの腕が抱きとめてくれた。
「くーさん、大丈夫か、危うい怪我はその腹だけか」
 耳元で、聞き慣れた―――けれど今は硬い声。
「…………フィ……?」
 随分早いなと、どこか冷静に思う。そんなに近くにいたのか。―――そんなに近くに、着いたのか。
「あぁ俺だ、ユフィだよくーさん、俺の声は聞こえてるな? 意識はまだあるな?」
「……、…………」
 返答したいのだが、声にならなかった。自分を支える男の声が鋭く指示を飛ばすのが、少しずつ遠くなっていく。
「……おいくーさん、狂! 俺がいいって言うまで寝るな、俺の声をちゃんと聞いてろ! いいか狂! 狂ッ!」
 狂って呼ぶんじゃねぇよくーさんと呼べ、といつもの調子で返そうにも体が許してくれず。
 苦笑を浮かべようと思ったところで―――ふつりと記憶が途絶えた。



 目が覚めたら見知らぬ眩しい部屋で、狂は無意識に何度か瞬く。
「狂!!」
 と思ったらいきなり大声が降ってきた。そちらを向けば、橙色の。
「……おぉ、ユッフィ」
「おぉユッフィ、じゃねぇよこの馬鹿! まったく……心配、させやがって……!」
 はぁ、とあからさまに、狂には大げさに見えるほどの溜息をつく。その姿を眺めながら、そうか彼に救われたのかと、今更ながらに事実を確認した。
 脇腹の痛みはまったく感じない。
「……どうなってやがる」
「怪我はだいたい治ってるよ。でも失血が多すぎだ、しばらく横になっとけ……っていってるそばから起きようとするな!」
「ぅお」
 肘を支えに持ち上げようとした体は、頭を押さえ込まれることで簡単にベッドに沈んだ。
「お前死にかけたんだぞわかってんのか!? 意識なくなったとき俺がどれだけ心配したと思ってる!」
「そりゃあ悪かったなユッフィ。そして狂じゃなくくーさんと呼べ」
 それにまた怒鳴り返そうと口を開いたユフィは、けれどそれをやめて、頭を抱えて溜息をついた。
「あぁ、もう……。まぁそれだけ言えるようになってれば大丈夫か……」
 そしてそのまま、狂には見えない方へ振り向いた。振り向いた先から現れたのは―――
 目に鮮やかな極彩色と、灼熱の。
「くーさん復活?」
「オマエにしたらなんとも無様な眺めだな」
「あはは違いないねさっさん、日頃の恨みを晴らすチャンスかな? 俺はどちらかというとさっさんに恨みを晴らしたいんだけどね!」
「…………、なんで全員集合してんだい」
 狂と同じように、この城に、この世界に、本来関わりのないはずの姿を目にして、狂はこの場の主に説明を求めた。
 橙が笑うように細められて、「揃っちゃったんだよ」と肩を竦める。
「甘味を求めて三千里ってやつさ。別にくーさんを心配してきたわけじゃないから安心して、俺そんな気色悪いことしないから」
「殺しても死ななそうな男だからな、端から心配してねぇよ。どっかの誰かみたく」
「……どっかの誰かって誰だ」
「誰だろうねー王様?」
「…………。……あぁくーさん、歪のとこにはラインが行ってるから心配すんな。あの二人が揃えばなんとかなるだろ」
「あれ、王様無視? 俺のこと無視すんの?」
「残念だったなひよっこ、オレと遊ぶか?」
「やだなぁさっさんそんな冗談笑えないよ」
 ―――いつもと変わらないやり取りに。
 狂は思わず、声をあげて笑った。
「……なんかいきなり笑いだしたよ、頭でも打ってたの?」
「これ以上頭がおかしくなったら重症どころじゃすまねぇぜ狂」
「……お前ら怪我人に向かって言いたい放題だな……」
 蔑むような嘲笑を浮かべる鳥、それに便乗するサチコ、呆れたように溜息をつくユフィ。
 狂はそれを順に眺めて、クク、と喉の奥で笑う。
「不思議な縁で繋がってるんだなあ、オレ達は」

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