全然残暑っぽくなくてお見舞いも何もあったものじゃないけれど(←
独立頁つくるまでもないと思ったので、追記に格納します。
花火ネタSS。甘くも何ともないのであんまり期待しないで読んでください(笑
最後の台詞の含みがちょっとだけシリアスよ。そして本編と平行しながらこういうの書くと、ラインの表情描写が……切ない(←
独立頁つくるまでもないと思ったので、追記に格納します。
花火ネタSS。甘くも何ともないのであんまり期待しないで読んでください(笑
最後の台詞の含みがちょっとだけシリアスよ。そして本編と平行しながらこういうの書くと、ラインの表情描写が……切ない(←
++―――++
「花火やろう!」
真子斗の一言で、夕食後急遽花火大会になった。
買い置きがあるんだ、とどこからか引っ張り出してきた花火セットに、真子斗は上機嫌である。
「……花火って、なんだ?」
ユフィが問えば、
「さぁ……私にもよくわかりませんが」
とラインが首を傾げ、
「とにかく綺麗だから! って、主催者は大はしゃぎしてるね」
フィオナはバケツに水を汲んできた真子斗を見遣る。
「でもよかった、ユフィさんも一緒にこれて」
真子斗の家には、小さいながらも縁側に面した庭がある。その縁側で花火セットをばらす作業を任せていた三人の様子をうかがいつつ、真子斗はそう声を掛けた。
「マコちゃんの為ならいつでも時間つくるよ♪」
「うーわー出たね口説きのユフィ」
「何だその二つ名」
「それで私の仕事が増えるわけですね」
「違うっての!」
騒ぐ三人に苦笑しながら、真子斗は蝋燭に火を灯した。今日は風が弱いので、消えることはないだろう。
「やり方は簡単。これをね、」
と、手持ち花火を一本手に取り、
「あ、持ち方わかんなかったら聞いてね。で、こっちに火をつける」
火薬に点火されるまでの数瞬をおいて、勢いよく明るい緑の炎が噴き出した。
おぉ! とあがる歓声。
「すごい、綺麗ー!」
「燃えて……いるのですか、それは」
「へぇ、魔術じゃなくてもこんなことができんのか」
各々それぞれの感想だ。
煙は虫除けの効果もある。けれど煙を散らしてくれるくらいの風はあるので、そこまで目や喉がつらくない、花火日和だ。
一目惚れしたらしいフィオナは、次々と別の種類を試しては色の変化にはしゃぎ、ユフィはよく男子がやるように、数本を一度に点火してみせる。ユフィの場合、蝋燭を使わなくても点火できるから羨ましい。
縁側に座ったままのラインは、思い出したように時折一本とって火をつけるものの、大半は真子斗達の花火を眺めていた。
「……ラインさん、楽しい?」
「え、楽しいですよ?」
真子斗の声に顔を上げたラインは、あ、と思い至ったように慌てた表情をつくった。
「すいません、楽しんでるように見えませんでしたか。気を遣わせてしまって」
「ううん、そんなことはないんだけど」
真子斗はラインの隣に腰をおろす。立っているのが少し疲れた。
「……あなたの文化に触れるのは、新しいことが多くて、とても面白いです」
「そう? それならよかった」
「……おや、これも花火ですか?」
ばらした花火を弄んでいたラインが、そう言って真子斗に見せたのは、線香花火の束だった。
「うん、そうだよ。こっち持って」
と説明しながら、受け取った束から一本引き抜いて、手渡す。
「線香花火って他のと違って、ちょっとでも揺らすと落ちちゃうからね。気をつけて」
「そうなのですか」
手を伸ばして蝋燭から火をつけたラインは。
橙に光る小さな火薬の塊に、目を輝かせた。
微かに爆ぜる火花に魅入られたように、綺麗です、と呟く。
「気に入った?」
真子斗の問いかけに、とても、と応じた瞬間、橙が落下した。
あ、と思わず漏れた声が重なる。
「ああ、本当に……すぐに落ちてしまうのですね」
「まだまだいっぱいあるよ。あ、今度はどっちが長くもつか勝負しよっか」
真子斗はラインに新しいのを渡して、蝋燭を引き寄せた。せーの、で同時に火をつける。
「―――美しい」
散る火花をその青に映して、ラインは心底惚れたように呟いた。
「他の花火もきれいですが。これは……儚くて、刹那で……こんなに小さいのに、小さいから、可憐だ」
真子斗はそれを聞いて、茫然とラインを見た。
「……え、私おかしなこと言いました?」
ううん、と真子斗は首を振る。一瞬焦ったが、線香花火は落ちなかった。
「そんなこと、考えたこともなかったから……。ラインさんはやっぱり、言うことが違うねぇ」
「ええ? そう……ですか」
こういう時の彼の、困ったような、はにかんだような笑い方が、真子斗は結構気に入っている。
「また、みんなでやりたいね」
それにラインは、ただただ穏やかに、微笑する。
「また……誘って、ください」
―――晩夏の夜は、ゆるりと深まっていく。
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