新学期が始まりまして、毎日ばたばたしております。
お題に使おうと思ってた小ネタ出してきました。
今浮かぶ小ネタが全部過去か未来話である罠……早く本編完結させよう。
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きれいだね、と笑いあったのはもちろん覚えている。
双子なのだけれどいろいろな部分が正反対で、だからお互いの持っているものが羨ましくなるのである。
ラインはフィオナの金糸が好きだったし、フィオナはラインの銀糸が愛おしかった。
だから―――ラインが髪を切ってしまったとき、フィオナは驚く前に悲しかったのだ。
「ライン! どうして!?」
肩にさえ触れない程に襟足は短いのに、前髪は邪魔に伸ばされている。視線を怖がるように、左目には眼帯。
胸倉を掴んでつめよるフィオナに、ラインは目を合わせないように俯いて、ぼそり、と呟くように答えた。
「……銀は……きらいだよ」
その一言に含まれた弟の、フィオナには理解できるはずがない深い深い恐怖をそれでも考えて感じ取ることはできて、だからフィオナは、「ばか!」と叫ぶ。
「ラー君がきらいでもわたしは好きなの!」
「…………、フィン」
知ってる。聞いた。その銀がどんな力を秘めているかは父から聞いた。
それがラインをどれだけ苦しめているかもわかっているつもりだ。
だけど。いや、だから。
「二度と切っちゃだめよ、姉様命令なんだからね!」
「……フィン……僕は、」
「ラインの銀髪はとってもきれいよ! きれいだからわたしは大好きなの! わたしにはないものだからうらやましいの!」
困ったように、青の瞳がフィオナを映した。こんなもの、とその目が言っている。こんなもの、うらやむようなものじゃないよ。
耐えきれなくなって、フィオナはラインを抱きしめた。
「わかった、取引よ。わたしが守ってあげるから、髪を切っちゃだめ」
「……、え、」
「生まれた日はおんなじなんだから、男の子が女の子を守るべきなの。だから、わたしはお姉さんだけど、ラー君がわたしを守るギムがあるの」
「いや……それは」
ラインの方が頭がいいことは知っているから、言い返される前にフィオナは「いい!?」と強引に遮った。
「だけどそこを、わたしがラー君を守ることにしてあげる。そのかわりラー君は、そのきれいな髪を切っちゃだめ。もったいないじゃない」
「フィン……だからそれは」
「わかった!?」
まっすぐに、青を睨みつける。しばしそれを泳がせていたラインは、けれど諦めたように息をついて、まっすぐ見返して苦笑した。
「……わかりました」
「約束よ」
「うん、……約束するよ」
「ラインさんって、なんで髪伸ばしてるの?」
くるくると銀糸を指に絡めて遊んでいた真子斗が、ふと思いついたように問いかけた。
書類に目を通していたラインは、ちらと真子斗を見てくすりと笑い、視線を遠くへ投げる。
「姉上との……古い約束なんです」