素敵漫画をみてしまったので、これは私もなにかやらねばと。
4人一気に登場させると、どうしてもユフィ視点になってしまいますな……仕方ないか。
久しぶりにギャグ書いたかもしれない。楽しかったです。
4人一気に登場させると、どうしてもユフィ視点になってしまいますな……仕方ないか。
久しぶりにギャグ書いたかもしれない。楽しかったです。
――――――
アステリアに雪が降った。
「うっわ積もってる!すごい!」
「……あのさ王様。そんなガキみたいに喜ぶこと?」
真白な中庭を前に目を輝かせるユフィに対して、鳥がため息交じりに一言加えた。
「喜ぶことさ!アステリアでは雪自体珍しいんだぞ。それがこんなに積もって!遊べるくらいに!」
センティレイドは毎年このくらい普通に積もるので雪に馴染みがないわけではないのだが、その景色がアステリア王城で見られるというのはまた違った感動がある。
「しかしこれだけ綺麗に一面真っ白だとイライラするね。王様、ぶっこわしていい?」
「もちろんだ、なぁみんなで雪合戦しよう」
「却下。」
すっぱりと速攻で拒否して、鳥はまだ踏み荒らされていない白い世界にざくざくと進んでいった。
「……ユッフィ……雪合戦とはアンタ本当に元気だなぁ」
寒さが苦手な狂は上着とマフラーで万端に防寒しつつもがたがたと震えている。
「くーさんはほんと寒いの苦手だな……動けばあったまるって」
「あったまるまでに動くのが嫌だ」
言いつつ、狂は七輪(というらしい、ユフィは語部で初めてそれを見た)を設置し始める。
「……あれ、お前それどっから出した」
「ユッフィ、火」
その震えようがあまりにもかわいそうなので、ユフィは指を鳴らした。七輪の中の炭が刹那だけ橙に炎上し、すぐに落ち着いてやわらかな熱を放つようになる。こうしたら狂が動かなくなるのは目に見えているが、部屋にこもらずここまで付き合ってくれている時点で評価すべきだ。
そういえば、一人足りない。
ぐるりと見渡して、ユフィは白い世界の中に、鳥の極彩色とは違った目立ち方をする紅蓮を見つける。
空を仰ぐでも、俯いて白を眺めるでもない、ただぼんやりと焦点をどこか別の場所に結んでいる隻眼に、ユフィは危ういものを覚えた。
だから屈んで雪をかき集め、両手にひとつずつの雪玉を作る。
「サーチコっ!」
反応して、首だけ振り向いた顔めがけて雪玉を投げつける。狙いは違わず、サチコの顔面が雪で埋まった。
「雪合戦するぞサチコ!」
「………………おい…………覚悟できてんだろうなウサギさんよぉ……!!」
「誰がウサギだミッ……違うユフィだっての」
頭を振って雪を払い雪玉を作り始めたサチコを牽制しつつ、枝葉に積もった雪をがさがさと落としている鳥が背後に来るように移動する。
「やってやるぜぇ雪合戦!喰らえミッフィ!」
「そうこなくちゃ!」
サチコの手から放たれた豪速球を、ユフィはひらりと回避した。回避した雪玉はもちろん軌道を変えることもなく、そのまま極彩色に激突する。
……雪玉が当たったにしては痛そうな音がしたが大丈夫だろうか。
頭を抱えてしゃがみこんでいた鳥が、ぐわりと振り向いた。
「今投げたのどっちだ!!」
ユフィがサチコを示すと、サチコは口角を持ち上げるだけの笑みを作る。怒気が収まっていない。
「悪ぃなひよっこ、ミッフィのこと狙ったんだがよぉ」
「あぁそう、原因は王様だね?そういうことだね?」
「だから雪合戦やろうって最初から言ってるじゃないか、よっ」
ユフィは最小限の動作で、先程からけたけたと笑いながら傍観を決め込んでいる狂へ雪玉を投げた。正面から狙ったから、狂は反応よく腕で受け止める。ただ機嫌は急降下したらしく、眉間のしわが深くなった。
「……ユッフィ、だからオレは寒ぃからやらねぇって」
「くーさんいないとつまんないだろ、その外見で爺臭く暖取ってるなよ」
「アンタは外見以上にはしゃぎすぎだってぇの。どうでもいいが後ろ気をつけた方がいいんじゃねぇかい」
うしろ?とユフィは振り向いた。途端視認したのは、サチコがこちらに向けて両手で抱えるサイズの雪玉を投げつけてくるという場面で。
とっさにユフィは炎の障壁をつくって雪玉を蒸発させた。
「ちょっと王様それ反則!」
「うっさい、今のは少なからず命の危険を感じた!サチコそれ雪合戦じゃなくて雪だるまサイズだぞ!?」
「誘われたからには誘った本人楽しませてやらないと悪いからなぁ?」
「うっわその気遣いいらねぇし!あと鳥も地味に命中してるって痛い痛い俺ばっか狙うなッ」
「提案者を楽しませるって意見は俺もさっさんと同じだからね!集中砲火?気のせいさ!」
完全に2対1の不利すぎる状況を作り出してしまったユフィは、反撃しつつ思う。
―――たまには何もかも忘れて、ただ目の前の状況を楽しんだっていいじゃないか。
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