センちゃんが素敵なカルテットメンバースーツ絵を描いてくれたので、その報酬(笑)にSSです。
結局着てないとか……あとほぼ会話です、ごめん……
結局着てないとか……あとほぼ会話です、ごめん……
――――――
サチコが無言で持参した袋を突きだすと、ユフィは真顔で首を傾げた。
「なんだ?」
「なんだ、じゃねぇ。オマエが頼んだから持ってきてやったんだろうが……もう持ってこねぇぞ」
袋を受け取ったユフィは中を覗いて、傍目にもわかりやすすぎる程顔を輝かせた。
「ちょ、サチコおまっ……大好きだ!!」
がばっ、と自分より長身のサチコに抱きつくユフィを見て、鳥は顔をひきつらせ、狂はけらけらと笑いだした。
「ユッフィに告白されるたぁ、どんな貢物したんだい?」
「貢物じゃねぇし野郎に愛を告白されても嬉しくねぇよ……離れろ」
「野郎が野郎に告白してるシーン見るのも楽しくはないよ。ねぇ王様ァー、何が入ってたの?」
テーブルでお茶菓子を貪っていた鳥が立ちあがるなり、最後の来客と出迎えた家主の傍に寄っていく。そして土産の正体を確かめて、あからさまに顰め面に変えた。
「げ。ビールかよ……」
「ビールだよ! 缶ビールだよ! 素晴らしくないか!?」
「どこがどう素晴らしいんだか説明してほしいね。あ、やっぱいいやめんどくさい」
「ユッフィ、リンゴむけたからいつまでもひっついてないでこっち来たらどうだい」
ナイフを拭きながらの狂の言葉に、ユフィはぱっとサチコから離れ己の席に座った。状況だけでは誰が家主なのかわからない。
サチコはひとつ溜息をついて、空いているソファに腰を下ろす。
「狂、オレも食う」
サチコの発言に、3人の視線が集中した。どれも、驚愕。
「……なんだよ」
「食事許可とかなんとか……下りたのかい」
サチコが首肯すると同時に、向かいにいたユフィが立ちあがった。
「よし決めた、今夜は宴だ! みんなで晩餐だ! 拒否権なし!」
「……王様、今日の王様は随分とテンションが迷子だね……いや、今日の王様も? あぁ、いつもはこんなにウザくないか」
「早速準備させてくる」
鳥の言葉にも全く反応せず早足で部屋を出ていくユフィに、今度はサチコが首を傾げた。
「……ミッフィはどうしたんだ?」
「嬉しいのさ」
サチコの前にティーカップを置きながら、狂が苦笑する。
「嬉しい?」
「あれで王様は、さっさんにお茶勧めるのもちょっと控えてるところがあるみたいだしね。食事一緒に食べられるなんてめったになさそうだから、はりきってるんじゃないの? くーさん俺にもおかわり」
「……嬉しい……ね」
ふと目を伏せて、サチコはカップに口をつける。
「……そうか……よし、ユッフィがはりきってるならオレも一肌脱いじゃうぜ!」
鳥のおかわりを用意し終わった狂が、にやりと怪しげな笑みを浮かべた。
それにサチコと鳥はどちらからともなく目を交わす。嫌な予感。
「晩餐! といえば、ドレスアップだな! じゃーん!」
セルフ効果音を入れて、狂が掲げた両手には―――スーツが二揃え。どちらもダークスーツだが、片方は赤いネクタイの合わせられたダブルボタンで、片方はVネックシャツのカジュアルコーディネート。
たっぷり20秒の沈黙が続く。
「…………おいおい、ノーリアクションかい、つれねぇなぁ」
「狂……お前それどっから出した?」
「さっさんそっち? まずそっちなの? いや確かに俺もどっからつっこもうか迷ってたんだけどね? じゃあ俺は、『それ俺たちが着るの?』」
「こんなこともあろうかと、サチコと鳥さん用にあつらえておいたのさ!」
「どんなことを想定していたのか聞いてもいい? というかそれ以前に俺たちのサイズいつ測ったの?」
「見りゃわかるだろ」
「えっ、気持ち悪い!? ていうかどこから出したかっていうツッコミは、」
「ユッフィと俺のもちゃんとあるぜ!」
「スルーかよ!!」
「……何の騒ぎだ?」
扉が開いて、晩餐企画発起人が帰ってきた。狂が掲げる両手のスーツに「おぉ」と上々の反応を見せる。
「なんだ、ドレスアップか? くーさんさすがだな」
「だろ? オレはそういう反応を待ってたのさ! ついでにこっちがユッフィとオレの」
サチコと鳥の分を本人達に押し付け、次の瞬間には新たなスーツを両手に持っている。
「……うん、ありがとうくーさん、それどっから出した?」
「……一気につっこむとは……さすがミッフィ」
「ミッフィ言うなし」
「えー、マジでそのスーツ着て飯食うの……堅苦しくてやだな」
「晩餐はドレスアップ、これ基本」
「そんな基本いつ作ったんだよ! いつも食わしてくれる時私服じゃないか!」
「あれは夕食、今日は晩餐」
「わけわかんねぇし!」
鳥の主張に、ユフィは腕を組んでふと微笑した。
「だから、晩餐。いつもより豪華にするの、宴なの。まぁ無礼講だがな。楽しみにしとけ」
「だめだ、俺の理解を超えてる……もういい」
さて……とユフィが、ソファに撃沈する鳥と、リンゴを齧るサチコと、衣装かけにスーツを下げる狂を順に見渡した。
「まだ時間があるな。何しようか?」
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