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「……あ、やば」
ユフィは積み上げた書類の中から目当てのものを探し当てるという作業の途中、思わぬものを発見してしまった。
書類その他資料を紐で綴じた簡易冊子、その内容はエルグランドとの共同会議の議題。
書き込まれた字は明らかに自分のものではなくて。
「これウィルトのじゃないか……なんでここに紛れてるんだ……」
前回訪問した時は予定が詰まっていて慌てて出てきてしまったので、間違えて持ってきてしまったのだろうか。
ユフィはがしがしと頭を掻きながら溜息をつく。
「悪いウィルト……今度会う時絶対渡す」
「っくし」
ウィルトは執務机に向かったまま、鼻をすすった。
動かす手と集中が一瞬途切れたので、そのまま時計を確認する。
思った以上に時間が経っていた。
「もうこんな時間か……早く仕上げないと」
今夜はフィオナを晩餐に招いているのだ。約束の時間まであと少し。
今頃は服を選んでいたりして、と柄にもなく顔がほころぶ。
「フィンちゃんは今日もめかしこんでくるのかな」
「っくしゅ」
フィオナは衣装棚を物色しながら口許を覆った。
着ていくものはだいたい決まったのに、それに合わせようと思った髪飾りが見つからない。
しばらくごそごそと小物を収納している引き出しを漁って、あ、と思いだした。
「……マコに貸したんだった……今城下か」
仕方ない、と諦めて、別のお気に入りを取り出した。別にどちらでもよかったのだが、こっちは以前ウィルトとあった時につけたことがあるのだ。
合わせて首飾りも変えようと、別の引き出しを物色し始める。
「マコのことだから、返すの忘れたりはしないと思うけど……タイミング悪かったな」
「くしゅんっ」
真子斗は会話の最中だった店主に心配されて、大丈夫ですと手を振った。
一人で城下散策に出た帰り、ラインにおみやげを買っていこうと立ち寄った、紅茶とお茶菓子の店である。
いつも御用達のものと、冒険に新しいものをいくつか見つくろった。
「じゃあ今日はこれで」
チェリーのジャムはスコーンに添えるとおいしいらしい。早速帰ったら試してみようと思った。
店主が袋に包んでくれている間、真子斗はふと窓から空を見上げる。
「ラインさんもう帰ってるかな……喜んでくれるかな」
「……くしゅっ」
ラインは書類を手渡される瞬間に顔を背けた。
なんだ大丈夫かとユフィに聞かれ、肩を竦めて応える。
寒気はしないから風邪ではないだろう。
「誰かが噂でもしてるんですかね」
噂でくしゃみが出るんだったら俺達は始終止まらないだろうよ、とユフィが言うのももっともなので、確かに、とラインは苦笑した。
目当てのものは手元に届き、話すべきことも話したので、ラインは立ち上がる。
「では、帰りますね。……きっとマコトさんが待ってる」